2025.02.28

道東へ

辻野建設工業株式会社の若手スタッフで役場庁舎を勝手に考えるプロジェクト。

昨日はその道東編を実施しました。

最初の視察先は足寄町役場。

当別町を出て約3時間半、少し早めに着いたので、松山千春の実家を見てきました。

足寄町役場は18年前にできましたが当時としては斬新な木造とRCの混構造。
面積が3,300㎡あるが木造の部分が3,000㎡を越えるといけないのでRCのエントランス部分で区切っています。

外壁はガルバリウム鋼板、まだそんなに古びた感じはありません。

南面が大きなカーテンウォールになってますが、日射が入り過ぎて暑くなるそう。
建設当始はつけてなかったが、建って二、三年後に冷房をつけた。
2階は床暖になってるが使ってないそう。
全面ガラス張りと言うのは温度管理が難しいものだと思いました。

換気はパッシブ換気と銘打って外気を地面下に回して1箇所から給気、給気の反対側の何箇所から排気をしています。

木造の工法はSMB建材株式会社のサミットHR工法。
大断面修正材工法で足寄町はこの工法で庁舎の他にも数棟、高齢者施設などを建てています。
辻野建設工業株式会社も道の駅当別の工事でこの工法を使いました。
地元のカラマツを集成材にして地材地消を図った事で議会の承認が得やすかったそうです。

RCエントランス部分の2階はガラス張りの町長室と副町長室になってます。

サーバー室。クラウド化が進みサーバーの数が張ってきているそう。

通路に面した収納。更衣室は作らなかったが、それでも問題なかった。

議場。床からの窓は開放感があって気持ちよかった。

議場はフラット。机は動かせるがあまり議会以外の目的で使ったことはない。木の横ルーバーはカッコいいが掃除の手間がかかる。

足寄町役場の暖房熱源はペレット。
庁舎と別棟で機械室があります。
面白いと思ったのはこのボイラーから庁舎の何年後かにできた裏手の高齢者複合施設にも暖房用温水を送っている。
ミニ地域暖房です。これは参考になると思いました。

ペレットボイラーは2台。ボイラー自体は壊れないが搬送施設が詰まったりするので、ペレット投入から燃焼までの経路や機械配置をよく考えないといけない。

以上足寄町。
視察が終わりちょうど昼時になったので、昼ごはんは足寄町の名物ハンバーガーショップのウッディーベルのハンバーガーをテイクアウト。
メチャでかい。

午後イチは芽室町役場へ。
担当者にあったらブログ読んでます、と言われアレレ、このブログも読まれるな、と複雑な心境。
芽室町役場はアトリエブンクの設計。さすが上手です。
構造は鉄骨造。
この建物は地上3階地下1階。
地下には会議室、機械室と書庫があります。

大きく跳ね出したピロティが駐車場の屋根を兼ねてます。

議場は木をふんだんに使っています。議員席と町職員席が対面し、議長席はその横にある。

議場の外にある議員休憩スペースは見晴らしがよく気持ち良い。議員利用はさほどないので町民にも開放しています。

全体的に曲面を使ったり、サインを見やすくして、柔らかい印象を与えてる気がします。執務スペース上のデジタル時計が見やすかった。

一階に出入り口が3ヶ所あり、どこからも町民が入ってこれる動線は使いやすそう。

会議にも使える相談室、キッズコーナーは使いやすそう。

掲示や表示の手間を省くデジタルサイネージをところどころに採用。

暖房方式に地中熱ヒートポンプを採用。

旧庁舎の基礎を生かした別棟の地下倉庫。湿気対策が大変そうでしたが、ともかく役所は資料が膨大にあり、その置き場の確保が大変そう。

少し離れたところに公用車用カーポートが数棟建ってます。駐車スペースの確保や配置も大事です。

庁舎の前に蕎麦屋さんがありました。
意図したわけではないと思いますが、公と民のうまい混ざり具合があるとエリア全体が和らぎます。

そして最後の視察地へ。新得町。
なんと新得町は旧庁舎が残っていました。

新庁舎は旧庁舎の真裏に立っています。旧庁舎解体、外構工事を今後行い全面完成は2年後。

新得町役場庁舎の構造はRC、木、鉄骨と3種類が混ざってます。
ここも木をふんだんに使っています。

柱や家具に地産地消のわかりやすい表示がしてありました。

省エネによって基準値に対する一次エネルギー消費量削減率が50%以上を実現しているZEB Ready(ゼブレディ)で環境省の補助金獲得を目指したが不採択。
この補助金制度、近年は競争が激しく公共施設はなかなか採択されない。

暖冷房の空気は床のガラリから出てきます。

議場は複雑な張弦梁構造。
張弦梁構造とは、「曲げ剛性を持った梁(圧縮材)と、引張材とが束材を介して結合された混合構造」。
木造大空間を作るときに採用されます。

役場ごとに慣習の違いがあると感じたのは新得町は部屋のドアを開けっぱなしにする慣習があるそうです。
議場、会議室のドアは基本、開けておきたい。
なので開きドア用ストッパーや引戸ストッパーを多用しています。
オープンな慣習で良いなと思いました。

私が新得町役場が優れてると思ったのは照明計画。
間接照明を多用し、光の演出効果が素晴らしい。ただ、暗いと言う町民の声もあるそうで、難しいもんです。

執務スペースに一般町民が入れないので職員が外に出て打ち合わせする場面が多い。
複数人数で通路で打ち合わせすると通路が狭くなるので、通路に面した打ち合わせコーナーが必要になる。
その辺の配慮がいるんだろう。

以上で道東視察は終わりました。

第一弾と合わせて7ヶ所見てきました。
最後はどこがどの暖房方式だったかこんがらがってきましたが、なんとなく役場庁舎と言うものが理解できました。
割り切った考えをすると役場庁舎は行政事務を執行するオフィスであり、どの町でも業務内容は同じようなもの。
だから同じ設計を使っても良いと言えば良い。

その一方で町長もいるし、議会もあるシンボル的な建物だから安っぽいものでは困る。

その折衷の度合い、町民の志向は町によって違う。

職員のモチベーション、組織マネージメント、公民連携のあり方、エリアの活性化などいろんな角度で考え、せっかく建てる庁舎をいかに町の発展に役立てるかと言う視点が必要なんだろう。

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