2023.06.13

薪ストーブとパッシブシステム換気の両立

昨日は辻野建設工業株式会社設計スタッフ2名と共に月形の林間住宅の中にあるTさん宅を訪問しました。

訪問の目的は薪ストーブとパッシブシステム換気がうまく両立してるかをヒアリングする事です。

結論からすると暖かく、空気循環も問題なしと言う事でした。
ただし、それを論理的に証明するのは難しい。

Tさん宅は13年前に建てました。

辻野建設工業株式会社の施工ではありませんが、パッシブシステム研究会の会員だった工務店が施工しました。

その後、北大の先生が室内環境調査をし、その調査結果を先生からいただいたので、次は住み心地を聞いてみたいと思い、突然訪問し、承諾を得てから再度ヒアリングに昨日訪問しました。

パッシブシステムの暖房パネルは床下に入っていますが、Tさん宅では使ってません。

薪ストーブだけで十分暖かいそうです。

しかしご主人と奥さんの感覚は少し違うようで、奥さんが薪ストーブから離れたキッチンに立つと寒い事はあるようです。

薪ストーブの熱の伝わり方は輻射がかなりの割合を占めるようで、薪ストーブと人間の間にソファやテーブルなどの障害物があると赤外線?が邪魔され暖かさが届かなく、設計時には家具の配置に配慮が必要です。

薪ストーブを使うのは11月中ごろから3月中ごろまで。

最初は朝晩2回薪をくべ、厳冬期の1、2月は一日P箱一杯ちょっと薪を使います。

パッシブシステムは床下空間と室内がツーツーになり空気が循環しますが、Tさんは薪ストーブのある土間と一階床の段差を利用して空気が出入りする隙間を開けても良かったかなと言ってました。

空気を排気するアエレコ。

隙間面積を表すC値は0.2。
なかなかの性能です。
サッシはペアガラス、外張り断熱40㎜、天井断熱400㎜。

夏の冷ややかさは風通しで解決し、パッシブの特徴であるアースチューブでの冷やされた空気による冷房効果は実感してないそうです。

薪は千歳の森林組合から長さ2~3メートルのナラの原木を6t、トラックで調達し、チェンソーで玉切りしたのち、13tの薪割り機で割、家の周りで乾燥させます。

煙突掃除は薪ストーブを購入した北海道リンクアップさんに年に一回、頼み、自分でもやれる掃除はやってます。

薪ストーブの外気導入は外壁につけた換気口から行います。
私は外気をパイプで引っ張る方式の薪ストーブの方が良いと思います。
薪ストーブ燃焼室内の上昇気流が室内の換気に影響を及ぼす事はあるかもしれないが、排気のためにあるアエレコから空気が逆流したりなどの不便さに感じた事はありません。

薪ストーブの開け閉め時に室内に煙が入って来ることがあり、逆に薪ストーブが室内空気を吸い込んでる事もあると思います。

厳冬期でも薪ストーブ一台で暖かくなるためには各個室に空気が流れるように配慮しなくてはなりません。

吹き抜けは必須のようで、音の筒抜けは当然あります。

最近のパッシブシステム研究会の議論ではトリプルサッシが普及し、窓が壁に壁に近い断熱性能となった今、今までダウンドラフトを止めるために窓下に設けていたアップガラリを窓下になくても設けなくても良いのじゃないか?熱源を床下エアコン暖房一台にし、部屋の真ん中辺の床下に持ってきても良いのじゃないか?と言う考えが検討されてます。

Tさんはこの考えにイイねと同調はされませんでしたが、Tさん、実際には床下パネルヒーターを使ってないので、理屈的には熱源の種類や配置は関係ない暮らしをされてます。

Tさんの話からパッシブシステム換気と薪ストーブは両立すると断言するのは難しいかもしれません。

薪ストーブは1階床上に置いてあるので、そこで温められた空気が2階まで上昇し、冷えた空気が1階床下に入るまでは良いけど、1階床下→1階床上のアップ気流がうまく起こるのだろうか?との疑問は残ります。

基礎断熱をやめ床下断熱にし、室内だけで空気を循環させるのも良いが、その場合、アースチューブから取り入れた外気が直接室内に出てくるのも寒そう。

床下を生の外気のバッファーゾーンとみなしても良いが、バッファーゾーンがデカすぎはしないか?

一方で薪ストーブが熱くなりすぎると言うのも考えもの。

床下暖房と併用したくても薪ストーブ一台だけで十分暑くなっちゃうので、パッシブシステムの計画換気が機能する場面が少ない。

パッシブシステムと薪ストーブ併用の場合は薪ストーブが主暖房で床下暖房はバックアップか補助暖房と言う事になりそう。

その際には薪ストーブが十分機能するように障害物や気流動線、薪の持ち運び経路を充分検討する必要がありそう。

全ての住み手が薪ストーブを使いこなす能力や性格、環境を持ってるかと言われるとそうでもない。

辻野建設工業株式会社がこれからやろうとしている伊礼智さんとのコラボ企画「iworks北海道」における暖房換気方式の採用課題としてパッシブシステムと薪ストーブの両立を考えているのですが、一般的な暖房換気を採用するのか、先進的な取り組みを採用するモデルハウスにするのか、その辺の整理も含めてこれから検討を進めていきます。

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