アイヌのランチタイム
会合番号:43
アイヌの主食の一つであるオオウバユリを採取し、そこからでんぷん質を取り出し、団子を作ることがメインの勉強になります。 場所は札幌市南区の小金湯のピリカコタン。 講師は財団法人北海道アイヌ協会札幌支部事務局長でアイヌ精神文化エコツーリズムアドバイザーの貝澤文俊さん。 参加者は7名でした。 最初に自己紹介。 ということで早速、車で5分ほどの山に出かけてオオウバユリを採取することにしました。 ちなみにオオウバユリはどこにでもある植物で、私のうちの庭にもあります。オオユバユリのことを知らないときは何だ気持ち悪い雑草だな・・と思っていましたが、今では見る目が変わりました。 アイヌの人は何カ月も山に入り、小さなチセを作ってオオウバユリを採取していたそうです。
オオウバユリにはオスとメスがあります。 下の写真はオス。この周りに花のないメスが7〜8株ほど生えています。 貝澤さんがサンプルを掘ってきて、採り方を教えてくれました。早速みんなで手分けして山に入ってどんどん球根を採りました。 採取した後に貝澤さんがアイヌの儀式を行いました。またオオウバユリ採らせてくださいを祈るのだそうです。
さて、ピリカコタンに戻ってきて、作業を行います。ユリ根の上下を切ります。 さっと洗い、一度ざるにあげます。 次にユリ根を分解します。水で洗いながらパカパカっと6つくらいの片に分けます。 次にアイヌ式の臼にさらし布を敷いてその上にユリ根を置いて包みます。そして、布でくるんでキネで突きます。 布の中が粘ってきたら布をはずしてユリ根を直接突きます。 繊維質が結構残っています。 どんどん突きます。 とにかく突きます。 繊維質がこれ以上細かくならない状態になったらざるにあけ、水でこしながらたらいで汁を受けます。 ざるでこした汁はこんな感じです。でんぷん質たっぷりのとろっとした液体です。
ざるに残った繊維質は冬場の食料として使います。 干してこんな風に保存します。 アイヌの人は突いたオオウバユリを乾燥し、粉にして保存してました。一番粉と二番粉があります。 昨日はオオウバユリを使ったいくつかのメニューをいただきましたが、そのうちの一つ。 上新粉とオオウバユリのでんぷん質を混ぜて鉄板で焼きますと、もちもちっとした食感のお好み焼き風の食べ物になります。これを甘しょっぱいたれにつけて食べます。
ぺネイモで作った団子の原料。 ぺネイモとは余ったジャガイモ(農家さん的にいえばノライモ)を冬場、畑にそのまんまにしておき、わざと凍らせたもの。春先にそれを潰して乾燥させ保存食として使います。がっちりシバれる気候と腐りそうで腐らないうちにつぶす微妙なタイミングが条件です。 ジャガイモ自体は北海道には自生していないので、ぺネイモは明治時代くらいからの食料ではないかとのこと。 今回は食べやすいように若干、砂糖を入れてて鉄板で焼きましたが、自然の甘みがあります。
エゾシカの甘露煮。 昆布の餡を周りにつけた団子。 「オハウ」というアイヌのみそ汁。地方によっては「ルル」という呼び名もあるそうです。 「レプニハ」と「セタエント」というお茶。 レプニハの原料は朝鮮五味子という植物。牧場の縁に生えているそうですがそう多くはありません。小さなブドウの房のような実を付けるので、これを干して、ティーパックに詰めてお茶にします。五味子という名にもあるように甘い酸っぱい苦いという様ないろんな味がするということですが、体にとても良いとされていたそうです。 みんなで作業を手伝ってようやくランチの準備ができてきました。 貝澤さんの生まれ育った場所は二風谷です。 貝澤さんのお話を聞きながら、また質問をさせていただきながらアイヌの人の暮らしを垣間見ました。 当然のことといえばそれまでですが、アイヌの人にも住んでいた場所によっていろんな暮らしのバリエーションがあり、山に住んでいたアイヌ、海岸に住んでいたアイヌの間で物々交換みたいなことが行われていたそうです。 貝澤さんはピリカコタンの敷地内にある茅葺小屋の骨組みを建てたそうですが、小さい頃に建て方を見てり、手伝ったり、長老に教わったりして覚えたけれど、その建て方を伝承してくれる人がいないそうです。 柴田さんという女性に聞きますと、実家は半農半漁で父親は冬は海岸の方に行ってシシャモなどを採っていたそうです。柴田さんは子供のころ、先ほどのトノトを飲んで酔っ払って、帰ってきたお父さんに見つかってよく怒られたそうです。
食後、ピリカコタン館内の展示コーナーを見学しました。アイヌの民族衣装を着て参加者で記念撮影。 こちらの展示コーナーの特徴は展示物が現代の人が複製したものなので原則的にさわってもよいということです。なのでサケの皮製品を持ってにおいをかいだり、刺しゅうの縫い目を手で触ったりできます。 一つ一つの展示品のデータがパソコンで閲覧でき、誰がいつ作ったかなどの情報を知ることができます。 手でよったひもで作った衣装。買うとなると80万円位するそうです。 貝澤さんの奥さんが作ったという儀式用のござ。 マナ板と皿が一体となった合理的な木製食器。 展示コーナー見学後にニレの木の皮でヒモ作り研修。 両手の指でよりながら1メートルくらいのひもを作りました。 私はこれで作ったストラップを自分の携帯電話につけました。 ひもを作りながら今度は柴田さんの実家のある鵡川に行ってアイヌ風のサケ料理やシシャモ料理について勉強できたら良いね・・・という話で盛り上がりました。